春のひかり/前田ふむふむ
を転げ落ちるのがみえる。
無人の交差点を、雲が蔽い、
ひかりの視線を一瞬、遮り、――
/子供のときに聴いた笑い声、/
かあさん、あれは、/僕の空、
/あのひなげしのむこうに、
/婆ちゃんが、ひかりのなかで、/降りそそぐ、
/折り鶴を眺めている。/
影を倒して、
ふたたび、沈黙した明度が、
あたりを這っている。
新しいひかりが。
・・・・
忘れないでほしい。
朗々と読み上げる透明な本の、厚みが増した夜は、
わたしの生きる呼吸の濃度が、
[次のページ]
戻る 編 削 Point(28)