春のひかり/前田ふむふむ
 
を転げ落ちるのがみえる。
   無人の交差点を、雲が蔽い、
   ひかりの視線を一瞬、遮り、――

       /子供のときに聴いた笑い声、/
          かあさん、あれは、/僕の空、
       /あのひなげしのむこうに、
       /婆ちゃんが、ひかりのなかで、/降りそそぐ、
       /折り鶴を眺めている。/

影を倒して、
ふたたび、沈黙した明度が、
       あたりを這っている。
      新しいひかりが。

    ・・・・

忘れないでほしい。
朗々と読み上げる透明な本の、厚みが増した夜は、
わたしの生きる呼吸の濃度が、
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