春のひかり/前田ふむふむ
 
が、またひとつ掘りさげられるのだ。
見え始めた語彙が、意味の先端に楔を打ちこみ、
夥しい足跡をもつ、
わたしを、曖昧に流れる都会の日常の外に置いて、
あなたとの距離を、豊かな花々で埋めていく。
あなたは、いっそう、
わたしの掌に、震える汗を、握らせつづけるのだろう。
春は、あなたのもえる胸の白い林間に佇み、
    繫がれている線は、さらに絡み合って、
    終焉の見えない物語が、
         頁を捲る成熟した時間を、
          増やしつづけているのだ。と

    ・・・・



まもなく、飛び立つ鳥が、止まっているみずうみがある。
そのなかを、着飾った密猟者が、
隠れるように近づいているかもしれない。
      それは、わたしの剥落した影法師。
きょうが芽吹いた若葉に波打つ、
わたしは、銃弾のような眼差しで、
       四月の灌木を見つめよう。
  あなたが、みえる場所に立って、
    涙ぐみ、浮かび上がるひかりを、共に見つめていたい。
   







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