春のひかり/前田ふむふむ
 
れて、
ガラス窓のあった場所を、悉く、充たしてゆく。
見えているものは、ガラス窓を飲みこんでいる死者たち。
ひかりは、強く光度を増して、
眩しさに眼を細めれば、震えるような色彩のさざなみが、
なつかしい言葉を集めた、葬列の夕立をつくっている。
濡れる頬を、萎えた手で探れば、
厳かに、比喩を象り、失われていた言葉たちが、
       新しいガラス窓を越えて、溢れてくる。

     碧空の眼差しが
         廃墟の眼差しを越えて――。
         


      ・・・・

わたしは、狭い鳥篭に押し込まれて、貨物のように、
毎日、丹念に耕した道を
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