艶布巾落とし/A道化
けてしまうばかり
いつまでもたどたどしいままで我を忘れることの出来ない指先からは
美しい音が生まれたことなど、ああ、美しいものが生まれたことなど、一度も
ただの一度もないのでした
廊下に落ちた西日の溜まりは
しろく、しろく、まぶしく
鍵盤からではなく指から生まれた美しいピアノ音は
豊かに、豊かに、弾み
まぶしすぎます、美しすぎます、そういうものがあまりにも多すぎます
まぶしすぎるものが美しすぎるものがあまりにも多すぎるということ
それを口に出すことは自らの不足を認めることである気がしていました
けれど、けれど、もう、私は
誤魔化すことが出来ない
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)