連作「歌う川」より その4/岡部淳太郎
 

終りは次の始まりへの
第一歩である
流れて歌って
河口でその使命を終える川も
そのことを知っている
川は
悲しまない
川は 祈る人に別れの
微笑を見せる




{引用=
そして川は
流れつづけた果てに
海へとそそぐ
祈るために生まれた
最初の人類も
海へとたどりつく
彼の眼に映るのは
旧人類が河口に築いた
港だった

ここで淡い水は
濃い水になり
個人の水は
全人類の水に変る
  河口の港
船は出る
(人はゆく)
船は入る
(人は訪れる)
鴎の鳴き声のように
魚の声なき口の動きのように 海は
凪と
時化を
繰り返す
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