花園/三条麗菜
 
そこはいつも夕暮れで
暗く沈んだ花園
ある時
一匹の鮮やかな蝶が生まれて
その上を軽やかに舞い始めたのです

私は長いこと
絡み合う植物でした
痩せた葉は光合成を忘れ
さりとて枯れることもできず
何もかもが赤褐色をしていて
大地からの少ない養分だけで
生き長らえていたのです

私が世の中で
何かを感じた時
色彩を忘れた花が
いくつも咲くのです
私は花の咲く年頃なのですが
その花は葉とも茎とも
もっと言えば乾いた地面とも
同じ色をしているのです

眩しいはずの太陽は遠くに去り
私はただ目立たないように
地面になりすまして生きる
だけでした


[次のページ]
戻る   Point(10)