夕鶴異聞/蒸発王
って真白な織物なんですよ
でも其れが
最後の日だけは違ったのですね
手に取った反物は
うっすらと
緋色に色づいておりました
真っ赤なわけじゃないんですけど
薄く
赤い色が引いてあったんですよ
しかも酷くやつれた顔で
此れを最後にもう織物はしないと言う
どうなすったか
聞きましたよ
女房殿はね
黙って背中を見せて下さいました
背中には
真っ赤に擦り切れた翼が
ボロボロになって垂れ下がっておりましたよ
女房殿がいうにはね
この翼は想像力の現れなんだそうで
もっと昔の人間は
この翼をつかって空だって飛べたんだそうで
もう
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