夕鶴異聞/蒸発王
て下すってね
ほら
そんなふうに接して下さるから
こっちもボッたくったりなんか出来ませんでしたよ
綺麗な織物だって
誉めると
真白な顔を
真っ赤にして首をふってね
いや
か愛らしいお方でした
私としちゃ
亭主の方が情けなかったですがね
真面目な亭主だったらしいですけど
布地が売れ始めたら
すっかり怠けちまって
ええ
ヒモですよ
女房殿も
たまに泣きはらした目で
売りに来たこともありましたっけ
そう
冬が終わって
春めいた頃でしたね
女房殿が
最後にここに来たのは
さっきも言ったように
女房殿の布は
いつだって
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