彼の、パキーネ、異形の詩歴書番外/佐々宝砂
は私の記憶に残ったのだろう。
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二十歳のとき、はじめて男性の恋人というものを持った。SFが好きなオタクっぽい男だった。音楽をガンガンかけてふたりでドライブした。私たちはそんなときたいていSFの話をした。ねえ「わがパキーネ」って知ってる?と訊ねたシチュエイションは思い出せない。たぶんドライブしてたときだと思う。彼は知っていると言った。なんだか気持ち悪いものを読んだという記憶しかないな…と言った。私は落胆した。落胆すると同時に気づいた。私は「わがパキーネ」という短編が好きなんだ。かなり、好きなんだ。
家に帰って本棚を捜索して、「わがパキーネ」を見つけた。再読した。再々読した。再
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