空飛ぶ機械のための習作/はらだまさる
に優しい霧雨の中で、突然、普通に聴こえていた近くの色んな種類の音(自動車のエンジン音や人の話し声)が物凄く遠くで聴こえるような感覚に陥って、ぼくと云う人間を浮き彫りにするような静寂に包まれたかと思うと、最初は物理的に近い人達の心の中が、手に取るように把握できる感覚に襲われて、耳を抑えても聴こえてくるその声達は、次第にぼくの視界中の生物の声だけに留まらず、その範疇を超え、眼に見えない世界までもの強烈な言葉の真っ白な光の雨となって、一気にぼくのこころに降り注いだのですが、そのあまりの凄まじさに、ぼくの身体はどう反応していいのかわからないといったようにガタガタと振るえ、次瞬間、歩行者信号が青に変わって、
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