風のブブブ/はじめ
僕は目を閉じて耳を澄ませ 車の走り去る音や機械の動く音 ざわざわとした人の音 空気の音を聴いた 空気は冷たく 時々風のブブブという音がする 耳殻に風が当たって微かに鼓膜を揺するときにそれに似た音が聞こえる
犬の空けた穴はもう湯気が立っていなくて何を思っているのかビルの壁へ顔を向け両足を揃えている 凄い早さで白車が通り過ぎて行って 音だけ聞くと野良犬を轢き殺す音に聞こえた 僕の心に小さな蟠りができた 犬は僕の後ろに視線を向けて最初はゆっくりと僕を通り過ぎる前には足早に去っていった 犬がいなくなった瞬間に尿意のことを思い出したがすぐ忘れ 僕は見慣れた雑居ビルとビルの間からの光景を見ていた
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