蛙声/ブライアン
える田の景色。その時、それらの景色と、眼球とが拒否反応を示していることに気が付いた。電車の中、帰る場所を失ったようであった。途方にくれた。さて、ここからどこへ行けばよいのだろう、と。
盆地の夕暮れは早い。午後5時の斜陽を感じる。光はうっすらと弱められていく。その光度に反応すべく眼球は、多くの情報を求めようとするが追いつかない。すると、視界以外の感覚がそれを補うように世界を感受し始めた。
その時、帰省した。久しく使われていなかった諸感覚が一斉に開花した。するとどうだろう。拒否反応を示した緑の田は、あっけなく向かいいれた。蛙の声が騒々しく聞こえてくる。拒まれていたものが融解し、地元の中に融解し
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