蛙声/ブライアン
 
中で響く蛙の声。特に感受性が強いものでなくとも、その声に魅せられるものは多いのではないだろうか。蛙たちの声は無数であったが、大きなひとつの塊に溶け合い、闇に吸い込まれていく。その様は、天に拒まれていると言うよりも、融解しているように感じられることもあった。
 しかし、天に届かぬ蛙の声は、大地の重力から抜け出そうともがく、「個」としての悲痛な叫びのようでもある。求めど、求めど、得ることのできない天への願い。
 闇が世界を包めば、ゆっくりと闇が、蛙の声を融解し始める。

 山形の実家に帰る機会があった。その日はとても晴れていた。夏に帰省するなど、とても久しいことであった。電車から見る緑に萌える
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