影縫い/蒸発王
 
間は無い

首を横に振った
子猫のことを言うと
ついてこれないなら
捨てるだけだ
と冷たく言って
足元から子猫の影を引き千切ると
私に投げて寄こした

瞬く間に

彼女は遠くへと走って行き

彼女の背中を見つめて
小さな子猫は
小さな瞳で
やはり
小さな涙をぼろぼろと零し
腕の中で鳴いた


長い尻尾を半分切って
欠けた後ろ脚を縫い付けると
子猫はいくぶん
元気になった
子猫は夕焼けが好きで
日暮れにはいつも
西の空を眺めていた
影だから
この時ばかりは
小さな子猫の手足もすっきりと伸びた

蕩けた太陽が
とぷり と
音を立て
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