王女メリサ5/atsuchan69
なくするとふたりは大風の真只中にのみこまれ、ぐるぐると転がり、宙を舞い、さらに転がりました。アスフィールは、つよくメリサを抱いたまま、けして彼女から離れることはありませんでした。
馬車が、家が、森がとんでゆきました。町も、畑も、愛も憎しみも、呪いも、すべてが風とともに吹き飛んでゆきました。
まるでそれは人智のおよばない種類の力でした。
かなりのときを経て、ようやく風がすぎたのを感じ、ふたりはそれまで見たこともないような寂しい景色のなかに立ちました。
やや離れたところを、よぼよぼの老婆が歩いています。よく見るとそれは魔女へレンでした。彼女は割れた大地の裂け目にむかっ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)