王女メリサ5/atsuchan69
 
強く!
}
 するとアスフィールは、もっとつよくメリサを胸に抱きました。

 ほんのすこし、魔女の空が揺らぎました。
 森の中では底なしの沼の淵がひらき、渦をまいた水がひくとそこに漆黒の哀しみ、母なる闇がありました。哀しみをたたえた闇はいくどか震え、大地をゆらしてもだえ苦しみました。そこから、いきおい虚空を切るようなつよい力がわきあがりました。それは母の愛、憎しみ、悲しみ、怒り、そしてすべてでした。森はとぶような風におそわれて、一本、また一本と巨木をひき抜きました。

 またアスフィールが見ると、荒れ果てた地平線のかなたに砂塵をまきあげ大いなる風が吹きはじめていました。
 間もなく
[次のページ]
戻る   Point(3)