王女メリサ5/atsuchan69
 
ってください。わたくし覚えています。あのときこう仰られました、『その理由がわかったとき、そして助けを求めたとき、母さんはふたたびもどります』と」
「ええ。そうです」
「わかりません」
「後、わかるでしょう」
 水につけた裸足の影をゆらし、母はさらにもっとふかくまで身をしずめました。
「あ、いけませんわ・・・」
 母はたちまち、底なしの水のなかへ姿を消してゆきました。「お母さま・・・・」
 するとカラスの騒々しい鳴き声はまだ止んでいませんでしたが、それ以上の物音をたてて小屋が揺れました。
「メリサ王女!」
 小屋のなかからアスフィールのさけぶ声がもれました。彼は窓にはりついてこちら
[次のページ]
戻る   Point(3)