王女メリサ5/atsuchan69
じゅうが「こそこそ」「さやさや」ざわめいているのが感じられたからです。屋根裏から真下を見おろすと、暖炉のすぐ傍でアスフィールが銀色の大きな乳母車のなかで眠っているのが見えました。起きだすと彼女はもうすでに沼のほとりに立っていました。
空を見上げると、騒々しい鳴き声とともに大勢のカラスが城へむかってとんでゆくのが見えます。そのさなかに、どこかで彼女をよぶ声がしました。
「メリサ、わたしです」
「あっ、お母さま」
母は、沼の向こう岸に立っていました。「そちらへゆきます」
「ダメ!」
きびしく母は止めました。
「なぜ?」
そう訊くと、母はむせぶような声で、
「いつか、わかるわ」
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