「手のひらの地図」 (青年詩片)/ベンジャミン
その線の流れは
いくつもの分かれ道があっても
不思議とまっすぐに見える
迷い間違えながら歩いているようでもそれが
過去となれば運命と名づけられるからなのか
生まれながらにして刻まれた
その地図には記憶がない
どれほど傷つき
どれほどの喜びを得ようとも
それが記憶されることはない
懸命に駆け抜け
あるいは立ち止まってしまったときでさえ
その痕跡を残すこともなく
どこで始まり
どこで終わるのか
今がどのあたりなのかさえわからないまま
ただ幾筋もの分かれ道を従えて
その中を歩いているということだけを
瞳に焼きつけることができる
その地図に
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)