王女メリサ4/atsuchan69
 
。彼はもう片方の手でわき腹をおさえ、どんより曇った空を仰いでこう言いました。
「王女。どうかもういちど貴女の顔がみたい・・・・」
 倒れるさまを見てメリサはもう、そこにいました。
「大佐。わたしです」
 抱きおこすと大佐はうすくひらいた眼で彼女を見ました。
「・・・・」
「なにか仰ってください、なんでもいいから」
「・・・・」
 大佐はなにも言わずただようやく笑うように口元をゆるませました。がれきのころがる破壊された街に一粒のいのちが消えてゆきます。
 メリサは涙のかわりに微かにふるえるような笑みをうかべました。切れ切れにやぶれ散ったベネトリアンの赤い国旗にかわり、街のそこかしこ
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