王女メリサ4/atsuchan69
 
つめていました。



 その夜のことです。妃は煌めく小さな明かりを灯して鏡の部屋にはいりました。
 確かに・・・・彼女は鏡のまえに座っていましたが、縁飾りのある鏡台の楕円の鏡のなかには、ただ闇だけがうつり妃の顔はありませんでした。廊下には見張りの者が立ち、なぜか上着のポケットからドングリをとりだすと耳に詰めました。
「わたしの愛する者よ」と言い、妃はいま着ている紫のドレスの胸元を引き裂きました。「ここには何もなく憎しみと哀しみだけがすべて。あなたはわたしを裏切り、わたしはひとり取り残された者のように力なく生きた。あなたが教えてくれたのは真実。今ここに何もないことと憎しみと哀しみ
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