王女メリサ4/atsuchan69
 
も言えなくなりました。
「失礼。ご気分を悪くされましたか?」
「いえ。大丈夫です。」
 ふたりは口をつぐんでまた歩きだしました。
 広大な敷地を被う緑の毛並み・・・・短く刈られた庭の芝草が艶やかにかがやいて見えます。
「ドメル大佐!」
 侍従が走ってきました。「王さまがお呼びです。至急お城におもどり下さい」
「わかりました。――王女。どうかお許しを」
「お気にされずに」
 大佐が行くのを見届けて、
「王女。ちゃんとお話になれましたかな?」
 よぼよぼした顔で侍従は訊きました。
「いえ。残念ながら」
 メリサはそう言うといつになく清々しい顔で遠ざかってゆく大佐の背中をみつめ
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