挙動不審者/hon
 
 しかし、そいつは窓枠につかまったまま一向に動こうとせず、ずっと私を見下ろすばかりだった。
 そのうち、急に眠気が襲ってきた。眠気は強烈で神秘的なものだった。
 これほど生き死にのかかった切羽詰まった状況で、寝てはいけないと真剣に思うが、どうにもならない。おかしな話だった。でも、自分の生きようとする抵抗が、こんな程度のものならば仕方ない。むしろ死ぬということは、もっと苦しくて酷いことを想像していたので、ひょっとしたらこんな風に寝ている間に苦痛なくすむのなら、それほど悪くはないのかもしれない。
 頭がぼんやりとして、ふたたび眠りにつくときのくつろいだ快感が全身に満ちてきていた。体中から力が抜け
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