『颱風の聲』/川村 透
 
金魚姫は茶色いせんそうの夢を見る瞳の、まま
黒の魔術師に横抱きに汚され道化どもに引き渡されて
空中ブランコからさかしまに吊るされて藍色の中空ぶらん、と。
冷蔵室の鉤爪にぶらさがった生肉のようにすがすがしい瘴気のサイダー
を撒き散らしながら白い腿濡らし赤く雫を落とす飛び出すハト、箱、絵の具
ぽ。
ぽぽ

青テントは台風の声はらみぼこぼこと顔をゆがませ思い余って涙をたらし
ぽ。ぽぽ。しゃ、ななな雫絞る黒い地面に血だまりじみて水、たまり
ません。
ぽ。ぽぽ。しゃ、ななな雫絞る黒い地面に血だまりじみて水、たまり
ませんお母様


台風の声がする、ゆあーんん。


道化
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