『颱風の聲』/川村 透
 
台風の声がする、ゆあーんん。


道化どもの動悸が青テントをきしませるサーカスの夜
ぎいこ、ぎいこ、と支柱が「舟」を漕ぐ
真ん中で振り子、する空中ブランコ金魚じみたラメ衣装の乙女ひぅぅぅぅるうん
「笛」を吹くみたいに芯のない風のドラム・ロールひるひるひるひるひる
蒼い船底を叩く、ざざ、ざざと気のない拍手じみた驟雨
ひうひうるとブランコをゆすぶる道化の目にも涙
振り子するたびにブランコの金具はおののき息を吸い込み、泣き
き。


台風の声がする、ゆあーんん。


道化どもは「雨」を見ている
さげすみのさげ降りそのピンクの舌で水滴をはじく湿った舌打ちを響かせる
金魚
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