可能世界と現実世界/和泉蘆花
 
まで知るかに掛かっていた。
仮りにこの次元の世界を現実と仮定してみよう。
これは相対性の問題だ。
胡桃の中にいるわたしは、閉鎖空間にいるとも考えられ、
否、内的自己宇宙の住人でも在るとも考えられるのであった。
いま此処に存在しているわたし自身は、紛れもなく人間の形をしており、
シナプス路では人々が往々しているのが確認できる。
彼らは何も知らないのだ。
すなわち、わたしの内的世界で住んでいることを。

わたしが何者かによって、胡桃にされたのと同じように、
彼らを皆、わたしが胡桃脳化させたのを知らないのだ。
そして、一人気づいた者が脱出口をまた探す。
その者は、脱出手立てが絵
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