可能世界と現実世界/和泉蘆花
 
遮断された世界。
この闇の中で、脱出口を見つけ出そうと必死になった。
ある歌を記憶している。
その歌に乗って、何処まで行けるか賭けてみよう。
そうすると歌回路網が出来上がり、わたしはシナプス路を歩けるようになった。
メロディーに乗って、記憶を辿って、出来うる限りのイメージを想い出そう。

わたしは道の真ん中にポツンと立っていた。
その道は何処までも果てしなく続いていた。
足がちゃんとある!
ほら、手は此処にある。
胸は? 頭は?
路上で何をしているのかと、人々はわたしを嘲笑した。
「閉じた世界の中で?
「わたしは開いた世界に立っている?

可能と現実の違いを何処まで
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