喪服屋マリー/吉田ぐんじょう
 
はまるで黒い皮膚のように
ぴったりと体に馴染み
おそろしく軽くて動きやすかった
注文が絶えることは無かった
人は思ったよりも無感動に
毎日毎日死んでゆくのである

ある日マリーは
自分が身ごもっていることに気がついた
誰の子供だか覚えが無かった
おそらく女の子だろうとマリーは思った
理屈では説明できないこと
というものは得てしてこの世に存在する
マリーの家はいつもこうだった
父親のいない女の子が
跡を継いで仕立て屋になる
マリーもそうだったし
母もそうだった
祖母も曾祖母もみんなそうだった
マリーは生地を裁断しながら
薄く笑
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