喪服屋マリー/吉田ぐんじょう
く笑った
その夜は珍しく注文が無かった
マリーは生地の余り布を寄せ集めて
小さい小さい喪服を仕立てた
それはひどい難産だった
と町の人はのちに言う
マリーは丸三日苦しみ続け
女の子を産み落としたと同時に
息を引き取った
ため息をつくような安らかな最期だった
でもそれが本当かどうかは知らない
何しろマリーは一人だったから
お義理のように産婆が傍についてはいたものの
産婆は居眠りをしていて
目覚めたときには既にマリーは死んでいた
ちょうどマリーの仕事の始まる時間帯だった
マリーの葬式は簡単に済まされた
マリーが最後に作った喪服は
生まれたばかりの娘に着せられた
葬式に参列した誰よりも
娘には喪服が似合っていたそうだ
生れ落ちた女の子にも
やはり名前が無かった
人々は彼女をメリーと呼んだ
戻る 編 削 Point(17)