王女メリサ2/atsuchan69
 
・・」
 エスターはなにも言いませんでした。ただ少女の頃とおなじ瞳で妃をみつめました。ふたりは離れると互いに中指のリングをはずし、無言で交換しあいました。そのあと妃はメリサのもとへすすみ、
「王様はもういらっしゃらないの。あなたにはそれがわかる?」
 ともにふたりの眼と眼が合うように膝をおとし小さな肩に手をあてて言いました。
 メリサはつぶらな瞳をかがやかせ、
「メリサ、王様にだっこしてもらいたかったの」
 そう言いました。
「ねぇ。今から言うことをちゃんと聴いて。母さんは遠い国へ旅立ちます。あなたを残してゆくのには理由があります。あなたにその理由がわかったとき、そして助けを求めたと
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