瑪瑙の牡鹿/蒸発王
 

甘味を帯びて蕩けた
1度食べ忘れてしまった時
右目が急に見えなくなってしまった
どうやら
右目のために
私は瑪瑙(めのう)を食べているらしかった



やがて

何年か経って
私は大人になって
絵描きになり
父も母も居なくなって

家は
私と牡鹿だけになった

鉱石屋は善く回ってきたので
瑪瑙は安価で買い求めていたが
在る日
ストックしていた瑪瑙(めのう)が切れた
困ったとはいえ
明日にでも鉱石屋は来るであろう
右目が見えなくなる程度であったので
ほっておいて仕事を続けた

真夜中

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