瑪瑙の牡鹿/蒸発王
 
経っていない私の瞳の色を見て
すっかり惚れ込んでしまったらしい
赤ん坊の目玉1つで
考えられないほどの金を出してきた
母は難産で私を生み
後の血で生死の境を迷っていた
父もまだ駆け出しの猟師で
季節は冬
獲物も獲れず

父が

ノミで私の目をくり貫いたのだ

美しい
金色に燃える瑪瑙(めのう)のような
糖蜜色の瞳だったよ

後に母が語った


物心がついた時には
もう
私の右目には
鹿の目が納まっていた

其の鹿の首は
右目の抜けた状態で
壁に大きく掛けられている
4本角を持った見事な牡
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