ブタさん貯金箱/士狼(銀)
 
父がくれたブタさん貯金箱に
思い出を詰めていく

新しい家に
わたしの部屋はない
巣立つ準備を婉曲に促されて
寂しさの余白が
無愛想なブロック塀で隠されていく
その白色は
この手で汚すつもりだったのに、と
握り締めたクレヨンが
奇怪な音を立てて掌を赤く染める
雨露に触れると醜く混ざり始めて
やがて腐った血液のような匂いが、した

違う、と叫ぶとエコーがかかるような
静かで冷たい夕暮れが
一羽のカラスを銀貨に換えて
それは貯金箱の中で、リン、と泣く

硝子のキリンは首が折れて
翡翠の赤イヌは尾がなくて
お人形のマイケルは綻び始めて
金平糖の星は、噛み砕い
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