ブタさん貯金箱/士狼(銀)
砕いたら熔けてしまって
いて
いつも側に
いて
薄れていく思い出を少しでも多く貯金箱に詰め込む
忘れたくない、時間だけが足りない、なんて言い訳も
夕暮れは持っていろと脅迫する
純度の高い銀貨がブタさんの腹で泣いている
わたしは
ごめんね、と
ありがとう、を繰り返しながら
いつかの壊れたオルゴォルを探す
夢はまだ蛹になる前だったから
液体にする覚悟がなくて
オルゴォルの内側に閉じ込めた
あ
蝶々
純度は低いけど
あなた、綺麗ね
ブタさん貯金箱はたくさんの思い出を食べて
少し、大きくなって
わたしの両掌に包まれて眠っている
その腹の中に一枚だけ
産声を上げた金貨がいることを
わたしだけが知っている
寂しいわたしの涙をブタさんに与えると
銀貨は蝶々に換わり
貯金箱の背中からゆっくりと飛び立ち
再び銀貨として腹の中で泣く
わたしと彼らの契約は夕暮れの名の下に、ある
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