王女メリサ/atsuchan69
 
で顔をおおい、芝生にしゃがむような姿で魔女の家の庭にいました。風の気配を感じなくなったので妃は両の手をはずしました。「着いたのね。ありがとう、もやさん」靄は元気そうに庭中を奔りまわりました。
 久々にもどったその家は、あいかわらずの憎しみと、あいかわらずの重くかなしい空気にみちていました。まだ立ち上がろうともせず、妃はそう大きくもない赤い屋根の家と馬小屋、朽ちかけた納屋とがらくたの置かれた庭を見わたしました。家の敷地を呪われた老木がかこみ、見上げても一片の空も見えません。すきまなく重なりあった枝が真昼でも陽のひかりを閉ざしているのです。森いちばんの呪いのかかった老木の枝のずいぶん高いところから、
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