王女メリサ/atsuchan69
 
きが聴こえました。森のある一点で妖精たちがほのかにひかりながらおどる姿も見えました。夜がしんしんと深くなってゆく気配を感じながら、フクロウはかつて魔女ヘレンを命がけで愛した男たちのしずむ底なしの沼をめざしました。
 沼のほとりに立つ枯れかけた背のひくい木のかぼそい枝にとまると、フクロウは羽ばたかずに落ちました。夜の静寂は乱れることなく辺りをつつんでいます。くろくまるいかたまりが折れた木の枝や落ち葉のうえにぽつんとひとつありました。かたまりはまもなく起きあがり、頭巾のついた黒くそめた亜麻布の外套をぬぎました。ここからはもう魔女でなく王女の母、そして妃でした。妃は「ぴゅー」と指笛を鳴らしました。

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