春の一歩/草野春心
 
を抜ける一歩
  トイレに入ってゆく一歩
  ひとつずつ押し花に出来たらなあ
  階段を上ってゆく一歩
  君が君になるための一歩
  「さようなら」の一言よりも
  強すぎる君の横顔が哀しいよ



  ねえ君は何を考えてるの
  どこを見つめているの
  言葉にすれば何かが砕けそうで
  手を握るのも違う気がして
  君が君になるって事は
  どうしてこんなに苦しいのだろう
  ねえ次の電車を待ちながら僕らは
  本当は何を待っているの



  君の髪が風にゆれている
  何度もくちづけた君の唇が
  真一文字にむすばれている
  君の目は僕を
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