絵描きを夢見て、詩人を目指した/雨露 流
 
わり、左耳をそぎ落とした自画像……。
目に見えたものしか描けない、想像で描くことができない、そんな彼はそれら全てに自己を投影した。
彼は自分自身の苦悩、苦痛、喜び、希望、すべてを絵筆に乗せてカンバスに描き出した。
描くことでしか、彼は自己主張できなかった。

歪んだ背景、渦を巻く空、行き先の分からない途切れた道……、麦畑の中心で、彼はピストルを手に取りこめかみを打ち抜いた。

その行為の意味は知ることは無い、人生に対しての絶望だろうか。

彼の絵画は死後、絶大な評価を受けることになるのだが……。

そんな彼の絵画を、別の画家はこう評価した。“なんて泥臭い絵画なんだろう”と。
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