花 妖/水無瀬 咲耶
 
かすかでたおやかな 耳慣れぬ金属質の言葉

((その日から 吊るされた心は
    眠ることができないのです))

はらはらり 桜いろの涙が 散りこぼれ 
倒れ伏したむくろの私をくるみ そっと弔う
うすももの破片は つややかなうろこ
ほのかなつめのいろ くちびるのあかるみ
めざめゆく肌の まどろみの記憶
ふいに あたたかな息吹にみたされ・・・
私 さくらうおになって
 ことんこととん 優しく狂ってゆく鼓動
すべてを失っても逝くところがあるのです
 藤いろの宵闇には煌き つういっと
予定不調和の波を縫って
 銀河の底で 花花とたゆたう
誰かの音の無い眠りの岸辺をつい
[次のページ]
戻る   Point(9)