ニカラグア競争男/カンチェルスキス
 
いに位置して
 おれは初めて、ボイスの声を、おっさんから
 聞いた、海が近くて、ウミネコがふわふわ飛んでる。
「おまえ、オレと競争してんのか?」
 黄色みがかかった目玉をちらちら動かし、おっさん、
 おれの頭の上で卵でも産み落としてきそうな勢いとは、
 どんなだ?よくわからんけど、そんな感じで。
 キウイフルーツの表面のような気概でもって、おれの声は
 くうねるあそぶに響く、砂利でターンするように、
「ああ、待ってろよ、おっさん。すぐに追い越してやっから」
 しゃべった、おれの声、自分でも頼もしく響いた。
 正確に測るまでもなく、秒殺の目視、おっさんと
 おれの距離とは、お
[次のページ]
戻る   Point(5)