(ある雨の日に)/草野春心
見えていることと見ていることは違うから
いつになっても他人は透明人間だ……しかしこの雨は
この雨だけはこの雨のまま
……これは僕の気まぐれだろうか?
見えないものは仕方ない
僕は町を劇場に見立てる。
無数の、しかしたった一つのスクリプトが反復される。
〈ボクタチミンナニンゲンダ
ボクタチミンナベツベツノ
シャツト ゴハント イエヲモチ
ジュウニントイロノ コイヲスル〉
超えられているからだ
雨がこんなにも新しくいられるのは
風に飛ばされ花に吸いとられ
ヒトに用いられるから
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