パセリと手紙のある浮き島/hon
 
はつきることがない。ぼくはカートをレジに置いて彼を呼ぶと、『チケット』で支払いを済ませて店を出た。
 それから『駅』の裏手にまわり、何軒かの住民にそれとなく顔をみせておいた。成果のほどは不明だった。
 荷物を抱えて人気のない道を歩いていた。いつもこの時刻はいくぶん風が強いようだった。路地の塀と塀の間から、鈍くくすんだ海は眼下に広がっていた。ぼくはこの海の広さに怖さを感じる。海が広いというのは単に事実だが、それが怖いというのはぼくの主観だ。なぜ怖いと感じるかは説明できない。小さい頃から山育ちで、海を見慣れていなかったというのはあるが、それでは説明になるまい。シーサーペントや、サルガッソー海や、人
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