パセリと手紙のある浮き島/hon
 

 ぼくは室内をうろつきはじめていた。カラーボックスの二段目を開けたり、四段目を開けたり、五段目を開けたり、四段目を閉めたり、三段目を開けたり、二段目を閉めたり、一段目を開けたり、中からベージュ色の靴下を取り出してみたり、それからドアを開けて、廊下を這っていったり、電気をつけたり消したり、目に付いたもの手の触れたものを、いいかげんにもてあそび続けていた。外は波の音がずっと続いていた。ザ、ザ、ザ……昼も夜も絶えることなく続いている音なので、自分自身の体臭のように、感覚に溶け込んで消えてしまっていて、もはや聴こうと意識しない限り聴こえない音になっていた。
 そのうち、ぼくは床に倒れこんで息をしてい
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