パセリと手紙のある浮き島/hon
いった投げやりな色彩でうやむやに交じり合っていた。どうも現実感に欠けるその眺めをみていると、海に浮かんだ家の中にいる錯覚をおこす……『先生』によると、ぼくがここに住む以前には、部屋自体まったく揺れているわけではないのに、その錯覚だけで船酔いになってしまった者もいたという。この部屋の窓から外は、いずれ美しい眺望にせよ、あまり見つめすぎない方が良い。その日の午後にぼくがダイニング・チェアに座ってパセリを見ていたのは、そんな部屋だった。
テーブルの上にある白い封筒については、とにかく見ることすらいやだった。どういう内容の知らせか分からないが、なにか理屈があって拒絶しているわけではなかった。最初にそれ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)