雨になる前に走り出してしまう/岡部淳太郎
 
しい雨の記憶を
ひたすら待ち享ける

それは 悲しい出来事に なるだろう
それは 惨めな出来事に なるだろう

わかっていて
それでもあえて
不幸を待つのだ
雨になる前にいつも
走り出してしまうから
安全な場所に
逃げこもうとしてしまうから
だからこそあえて
雨を待って
雨に濡れてみるのだ


          私は傘を持っていない。
          そのことをことさら大
          げさに言いつのるわけ
          ではなく、誰かの傘に
          入れてもらいたいわけ
          でもなく、ただ傘がな
   
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