音のない戦場/九谷夏紀
 
想も覚えることができた
戦争を知らない私は
意識上でだけでもこの写真から何かを得る必要があった

第二閲覧室の入口からずっと奥まったこの場所には
人がいなかった
背の高い書棚の上から下まで埋め尽くす背表紙は
人の誕生までさかのぼり現在まで辿れるだけの
小刻みな間隔の年代で戦いを順列していた
狂った欲と生死、嘆きと歓びが
一冊が抱え持つ文字の数だけあるようで
それが両脇の棚にある膨大な冊数分
私を責め立ててくるようだった
その圧迫感をやわらげるため
深く長い息を一呼吸つき
ここは穏やかな時が流れる図書館であったと思い直す
目を伏せて書棚の
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