白衣の堕天使/Rin.
見ている
始まりが、遠すぎる過去になった日
ひとり勝手に、楽園の扉を開いた日
アカズの棚の隣にある実験台には
相変わらず瓶がたくさん並んでいて
幼い頃、母の鏡台からそっと拝借した
化粧水やら香水やらのように見えた
どこか暗く青い液体の瓶
星砂のような粒子が沈んだ瓶
脱いだ形のまま抜け殻のように押し黙っている白衣には
かすかにぬくもりが残っていて
もう馴染んだやりかたで私はそれを引っ掛けた
実験の続きを促すように、音を立てて瓶をあけると
あなたは美しく振り向いて言った
この瓶の液体同士は混ぜちゃだめだよ、とでもいう風に
教えるように ただただ甘く
僕らはい
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