休日/水在らあらあ
を避けて
海に出る
冬の海辺にはたくさんの人が散歩している
犬もたくさん楽しそうに駆け回っている
俺はまっすぐに波打ち際まで歩いて
昨日なたで作った親指の傷を
キラキラしている水に浸す
空を見上げる
カモメたちが切る風の冷たさを
胸の奥に飾る
それは冴え冴えとした額縁になって
その中に母親の顔が浮かぶ
もう一度手のひらを水につけて
くびすじに当てる
どんなに水平線を睨んでも睨んでも
遠くにあるものはずっとずっと遠い
砂を一掴み 想いをこめて
風に投げる
向かい風で
全部顔にかかる
浜辺の果てのほうから
真っ赤なコートを着たおまえが歩いてくる
こんなに
[次のページ]
戻る 編 削 Point(16)