「 蒲鉾と犬と、月。そしてあたし。 」/PULL.
 
んとした顔で、
またあたしを見上げた。
「食べな。」
「わん。」
ひとつ啼き、
犬は半分の半分の月を食べた。
美味しそうに、
尻尾を振って食べた。
尻尾はさっきもより青みがかり、
振ると、
きらきらと光った。
まるで流れ星のようだった。
半分の月がうらめしそうに見ていた。


公園からの帰り際、
犬に来るかと聞いた。
犬は答えず、
あたしをじっと見つめ、
ぷいと、
公園の奥に消えていった。
無言のままだった。
しばらくして、
青みがかった遠吠えがした。
それは開放された、
野性の叫びにも聞こえた。
犬は戻ったのだ。

あたしは、
耳を澄まし
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