「 蒲鉾と犬と、月。そしてあたし。 」/
PULL.
まし、
それを聞いた。
躯の中がざわざわした。
血が熱かった。
彼のことを考えても、
泣きたくなんてならなかった。
「わん。」
もう一度だけそう啼いて、
ウロコ公園を後にした。
そして、
部屋に戻り、
おでんを作った。
あたしひとり分のおでんを作った。
その夜のおでんの蒲鉾は、
つるりんのもちもちだった。
了。
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